犬や猫を撫でているときや抱っこしているとき、「皮膚の下に小さなしこりのようなものがある」と気づき、不安になった経験はありませんか?
「しこりがある=すぐに命に関わる病気」というわけではありませんが、見た目や触った感触だけで良性か悪性かを判断することは困難です。
特に「脂肪腫」は、中高齢の犬や猫によく見られる良性の腫瘍の一つです。ただし、見た目だけでは他の腫瘍との区別が難しい場合もあるため、検査によって腫瘍の種類を特定することが大切です。
今回は犬や猫の脂肪腫について、特徴や見分け方、受診の目安などについて解説します。
脂肪腫とは?
脂肪腫とは、脂肪細胞が増殖することによってできる腫瘍の一種で、ほとんどは良性であることが多いです。
特にシニア犬に多く発生し、猫では比較的まれとされています。数年かけてゆっくりと大きくなる傾向があり、初期は小さく無症状のことも多いため、飼い主様がスキンシップの中で偶然発見するケースがよく見られます。
しかし、触った感じや大きさだけでは他の腫瘍との区別がつかない場合もあるため、脂肪腫と確定するには検査が必要です。また、場所によっては筋肉や関節に影響を及ぼし、生活に支障をきたすこともあります。
脂肪腫の特徴
脂肪腫は主に皮膚の下にできるやわらかいしこりとして現れ、指で軽く押すと動くことが多いのが特徴です。痛みやかゆみを伴わないことがほとんどで、日常生活には支障をきたさないケースも少なくありません。
当院で診察を行う際も、まずはしこりの場所や大きさ、硬さ、周囲との癒着の有無などを細かく確認します。しこりの変化を継続的に観察することが、適切な対応につながるためです。
また、脂肪腫は大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。
<皮下脂肪腫>
皮膚のすぐ下にできる最も一般的なタイプです。やわらかく、触ると動くことが多く、ほとんどの場合は無害です。ただし、時間とともに大きくなることがあり、周囲を圧迫したり、歩行や姿勢に支障が出たりする場合には手術での切除を検討します。
<筋間脂肪腫>
皮下にできた脂肪腫が筋肉の間に入り込んでしまうタイプです。触ると皮下脂肪腫よりやや硬く感じることがあります。進行すると筋肉を圧迫して痛みや歩行障害を引き起こす可能性があるため、早期の手術が推奨されます。
<浸潤性脂肪腫>
周囲の組織に広がっていくタイプで、特に四肢の筋肉内に発生しやすい傾向があります。切除しても再発するリスクがあり、正常な脂肪組織との境界があいまいなため、広範囲の手術が必要になることもあります。重症化すると足の切断を含めた大きな処置を検討せざるを得ない場合があるため、『ただの脂肪腫かも』と自己判断せず、早めにご相談いただくことが早期解決の鍵となります。
脂肪腫と間違えやすいしこり|受診のタイミングは?
脂肪腫は基本的に良性ですが、似たような見た目のしこりには悪性腫瘍や炎症性の病変もあります。例えば、以下のようなしこりには注意が必要です。
・短期間で急速に大きくなる
・表面が硬く、動かない
・皮膚に赤みや熱感を伴う
・出血や滲出液(炎症によって患部からにじみ出てくる体液)が見られる
このような場合、脂肪腫ではない可能性も高く、早めの診察が重要です。
当院でも「しこりを見つけたが、受診すべきか迷っている」というご相談を日常的に多く受けております。しこりの性状によっては緊急性が高いケースもあるため、「様子を見るかどうか迷っている段階」でご相談いただくことが、早期発見と適切な治療につながります。
診断方法
診察では、まず視診や触診により、しこりの性質や位置、大きさを評価します。そのうえで、細い針を使ってしこりの内部の細胞を採取し、顕微鏡で確認する「細胞診検査」を行うことが一般的です。
この検査は数分で終わり、麻酔を必要としないため、犬や猫の体にかかる負担が少ない点も飼い主様に安心いただけるポイントです。
必要に応じて、X線検査や超音波検査、CT検査などを併用して、しこりの深さや広がりを詳細に把握することもあります。
治療方法
脂肪腫の治療は、しこりの大きさや場所、犬や猫の年齢や生活への影響の有無によって方針が異なります。
小さくて症状がない場合は、定期的に観察しながら経過を見ていく選択をすることも可能です。しかし、以下のような場合には手術での切除が検討されます。
・しこりが急に大きくなっている
・歩きにくそうにしている
・他の組織への浸潤が疑われる
・悪性の可能性を否定できない
また、手術の費用は、検査の内容や腫瘍の大きさ、手術の難易度によって異なります。当院では、飼い主様に納得していただいたうえで治療を進めていくことを大切にしており、事前に丁寧な説明を行いながら、無理のない治療方針を一緒に検討していきます。
まとめ
脂肪腫は比較的よく見られる良性の腫瘍ですが、見た目や触った感じだけでは正確な診断はできません。だからこそ、しこりに気づいたときには早めに動物病院を受診し、専門的な評価を受けることが大切です。
「ただの脂肪腫かもしれない」と思っても、その判断が正しいかどうかは検査をしなければわかりません。特に、しこりの場所や大きさが変化している場合や、飼い主様が「いつもと違う」と感じたときには、迷わずご相談ください。
当院では、腫瘍疾患の診療において豊富な経験を有しており、しこりの診察から検査、必要な治療に至るまで一貫して対応しております。飼い主様としっかり話し合いながら、不安を取り除き、犬や猫にとって最適な医療をご提供できるよう努めています。
愛犬や愛猫の体に気になるしこりを見つけた際には、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
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